今年、第55回日本童謡協会新人賞に人見敬子さんの詩集『魔法のトビラ』が決定したとの知らせが4月末にありました。7月のはじめに授賞式が予定されています。
人見敬子『魔法のトビラ』には、小学生、中学生に向けた元気に生きる喜びの歌をはじめとしてたくさんのみずみずしい詩や歌が所収されています。
人見さんの詩には、私たちが住んでいる青い星・地球の抱えている困難や課題について問いかける作品が多く、ほかの詩人とは少し異なる視点が見られます。
作品「海氷」では、温暖化の進む地球にあって北極のおおきな海氷が流れ出す光景をシロクマとの対話のかたちで歌っています。作品「国境」「大砲」「とおい日のはなし」「地球の讃歌」などは新しい批評を含んだ平和への祈りの歌でしょう。フェンスで区切られた国境をめぐって繰り返される争いや戦争の悲しみや痛みをわかりやすい言葉で表現しています。人見さんは、この地球上に張り巡らされている国境をめぐる争いに心を痛めています。ウクライナやガザやイランの子どもたちへの思いが影をおとしているのでしょうか。
人見さんの詩のもう一つの魅力は、子どもたちにもよく伝わる草花や小さな生き物たちへの優しいまなざしの詩篇です。
作品「小さな風」では、うまれたてのアゲハ蝶やタンポポの綿毛への小さな風のはげましが描かれています。作品「雨はやがて」においては、乾いた大地をしめらせていく雨が種子や魚などに活力を与える光景をわかりやすく描いています。作品「魚の化石ナイティア」は遠い遥か昔に川の中でピチピチと泳いでいた魚が火山の噴火で火山灰に埋もれてしまい五千万年を経て、化石として現代の私たちに出会うのですが、そのはるかな時間に思いをさそう名作と言えるでしょう、作品「キャンディー」「カレンダー」「消しゴム」などは事物の側から私たち人間をもう一度見つめる新しい手法で独自な詩の空間を作り出しています。
画家の菅原史也さんの細やかな鉛筆画のさし絵とともに多くのこどもたちと、大人たちにも楽しんでもらえる詩集に仕上がったと思います。一年近く作者の人見さんと話し合いながら、ゆっくりと編集した日々をなつかしく思い出しております。
小社刊行の詩集、清水ひさしさんの『かなぶん』、田代しゅうじさんの『ともだちいっぱい』、野田沙織さんの『うたうかたつむり』、松山真子さんの『迷子』の三越左千夫賞、さらに昨年の日本児童文学者協会新人賞の秋元里文さんの『月にすっぴん』につづいての人見敬子さんの日本童謡協会新人賞となり、あらためて詩集発行の責任の重さを感じている次第であります。
人見敬子さんのますますのご健筆とご活躍を願っております。ご受賞まことにおめでとうございます!


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