人見敬子詩集 魔法のトビラ
2025 年11月25 日 第一版第一刷発行
著 者 人見敬子 絵 菅原史也
ISBN978-4-905036-43-2 C0092 定価1430円(本体1300円+税)
魔法のトビラを 見つけたよ
ふしぎな世界へ つづく本
トビラをあけて とびこめば
そこは ふしぎな ことばかり(詩集から)
人生の喜びと悲しみ、もし物たちに心があったらという視点からの詩、生きもの・愛すべきものや、友情への想い―多くの子どもたちに是非、手に取ってほしい詩集。
この確かな必然を聴こう 作曲家 早川史郎氏
著者 人見敬子(ひとみ けいこ)
東京生まれ。北里大学卒業。のちに童謡・詩の創作
に入る。
詩集「方舟地球号―いのちは元気―」(銀の鈴社)
NHK全国学校音楽コンクール課題曲歌詞募集・小
学校の部入選。「ふるさと」音楽賞日本創作童謡コン
クールグランプリ受賞など。
㈳日本音楽著作権協会 ㈳日本童謡協会 ㈳日本児
童文学者協会
詩集から
大砲
私は
大砲としての年月を過ごしてきた
火薬と血と涙の匂いの日々
そして もう
私の役目は終わるだろう
いつか もし
生まれ変われるならば
野原を行く蒸気機関車に
バラのつるを支えるアーチに
歌声を誘う ギターの弦に
なりたい
いいえ
もし 生まれ変われるのならば
傷付けてしまった人の
新しい身体の一部
その小さな留め金のひとつに
なりたい
小さな風
わたしは
今日生まれた 小さな小さな風
羽化したてのアゲハチョウが
喜びにふるえた
空気をたしかめようとした
その最初の 羽ばたきから
生まれたの
そして
わたしが春の庭を 降りていくと
タンポポの綿毛が一かたまりになって
飛んでいくところだった
ただ一本だけを のこして
わたしは その綿毛を そっと押した
さあ 飛び立って
みんなといっしょに
ゆるやかな風に
乗っていって と
みんな 生きている
枯れ葉のかげに落ちた
ひと粒の ドングリが
雨に うたれながら
青空を 夢見ている
いつか 芽を出すだろう
そして 高く伸びるだろう
風に 木の葉はうたうだろう
きっと 実をむすぶだろう
岩山の上の巣から
幼い 渡り鳥が
小さな 翼ふるわせ
巣立つ日を 夢見ている
いつか 風をつかまえて
青く 空と海に染まり
自由に 国境をこえるだろう
はるか 世界をめぐるだろう
みんな 生きている
みんな 生きている
みんな 生きている
ひとつきりの命を
風見鶏
わたしは屋根の上の
きれいなニワトリ
しっぽを ツンと上げて
つばさを たたんで
いつも 屋根の上
いつだって 風の来る方を
向いているの
すぎていった風下は見ない
右も左も
見ない
いつも風の来る方を
見ているの
だって
風が大好きだから
こうもりの歌
紫の夕闇に
腕を広げ 飛びたつ
三日月をかすめて
軒先をくぐって
日没こそ ぼくらの朝
夜の闇は ぼくらの庭
人々は家にいそぐ
こうもりの歌 歌おう
街明かり 消えるたび
夜は深く輝く
魔女たちは仲間さ
ふくろうも友達
ケンタウルスは 弓を放つ
天の川は 流れだす
人々は寝静まった
聞こえない歌 歌おう
こうもりの歌 歌おう

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