松山真子『だれも知らない葉の下のこと』

詩集

詩集 だれも知らない葉の下のこと

2020 年5 月5 日 発行

著 者 松山真子
 画  こがしわかおり
A5変形 上製本 84ページ 定価:本体1200円+税

ISBN978-4-905036-22-7 C0092

著者 松山真子

一九四五年生まれ。信州中野市で育つ。詩集『こんぺいとう』星の環会『詩集﹁さ

よならさんかく・またきてしかく』北信エルシーネット社など。日本児童文学者協会会員。

画家 こがしわ かおり 

一九六八年生まれ。埼玉県育ち。作絵に『おうちずきん』(文研出版)など。絵に『料理しなんしょ』(偕成社)『ダジャレーヌちゃん世界のたび』(303BOOKS)、詩集『ぼくたちはなく』(PHP研究所)『魔女のレッスンはじめます』(出版ワークス)など。

HP http://www.pagoda-house.net/

帯より

だれも知らない葉の下には、だれかがいるのです。そっと さがしてみたくなります。

松山さんの詩には、人びとの暮らしや 動物たちの不思議なつぶやきの楽しさがあり 作者の心やさしさが広がっていきます。    はたちよしこ

詩集より

 霧の中   松山真子

草やぶを抜けると

そこは一面の乳白色の霧の中

家に帰る道が見つからない

さっきまであったものが

すっかり消えている

大きな魚が泳いでくる

海藻が揺れている

海の中の乳白色

わたしはどこ

わたしの家はどこ

とおいところ

海の底にはりついている

小さな魚が

ずっとずっと昔の

わたしだと言いはっている

かわせみ   松山真子

ほんとうは

きれいな山の清流が好きだった

ほんとうは

だれもいない谷川で子育てをしたかった

ほんとうは輝く青色とオレンジ色の羽を

だれにも見られたくなかった

でも

いつから好きになってしまったのだろう

オタマジャクシがいっぱいいる

公園の池を

子どもたちの口に小魚を入れながら

ほんとうの自分はどっちなんだろう 

考えている

せ み   松山真子

とめないで

きょうは ただ

おもいっきり なきたいんだ

ごきぶり   松山真子

ちょっとちょっと

ほんきでやるきですかい

そのふるえるスリッパで

ばあちゃんに   松山真子

座るとすぐにねむってしまう

そんなふしぎな椅子があると

ばあちゃんが話してくれた

それを

ずっと さがしているんだって

このごろのばあちゃんは

夜ねむれない

風が雨戸をゆらしても

犬のタロウが鳴いても

すぐに起きてしまうのだと

幼稚園のとき

いつも送り迎えしてくれたばあちゃん

公園の回転ジャングルするときも

いつもだまって待っていてくれた

座るとすぐにねむってしまう椅子は

どこにあるのだろう

さがしてきて

ばあちゃんに座らせてあげたい

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