現代こども詩文庫 2  内田麟太郎詩集

現代こども詩文庫

発行日 2021年5月25日
 ISBN978-4-905036-26-5 C0392 定価1320円(本体1200円+税) 
現代こども詩文庫 菊永謙責任編集 
現代こども詩文庫 2  内田麟太郎詩集
著者 内田麟太郎 企画・編集 菊永 謙 カバー絵 大井さちこ
 
 現代こども詩文庫は、子どもの読者から広く大人まで楽しめる詩と詩人の全体像を明らかにし、広く世に問うものである。基本的には詩人の詩・童謡の自選集として児童文学評論家菊永謙が企画、編集し、解説を付したものである。
 すぐれた詩篇の数々、童話、そしてエッセイ・評論等を収録し、さらに詩人について他者からの重要な批評の再録、オリジナルの解説を収載し、詩人の裡に輝く児童文学の姿を浮き彫りにしたい。

著者 内田麟太郎(うちだ りんたろう)
1941年福岡県大牟田市に生まれる。
詩集に『きんぎょのきんぎょ』(理論社)『うみがわらっている』『まぜごはん』『たぬきのたまご』(第四回児童ペン賞大賞)『なまこのぽんぽん』(以上、銀の鈴社)『ぼくたちはなく』(PHP研究所、第15回三越左千夫少年詩賞)『しっぽとおっぽ』(岩崎書店)『あかるい黄粉餅』(石風社)『なまこ饅頭』(無極堂)などがある。
絵本に『おれたちともだち』シリーズ(偕成社)『さかさまライオン』(絵本にっぽん賞、童心社)『がたごとがたごと』(日本絵本賞、童心社)『うそつきのつき』(小学館児童出版文化賞、文溪堂)など多数がある。童話に『ぶたのぶたじろうさん』(クレヨンハウス)『ふしぎの森のヤーヤー』(産経児童出版文化賞、金の星社)など多数。第55回児童文化功労賞受賞。第39回巖谷小波文芸賞受賞。日本児童文学者協会理事長(2016年5月〜2020年5月)。

詩集から

  サメのゆめ

サメは
わらわない
くすりとも
サメは
なかない
くしゅんとも
ただだまって
にくをたべる
それから
ゆめのなかで
さめざめとなく

  ぼくたちは

もしかしたら
にんげんがえらいのは
かなしくても
つらくても
しにたくても
いきているからかもしれない

いしは なくだろうか
てつは なくだろうか
ほうせきは なくだろうか

ぼくたちは なく
つらくて つらくて なく
こえを ころして なく
こえを あげて なく
でも ぼくたちは いきていく

つらさを かかえながら
かなしみを だきしめながら
そんなぼくたちをみて
だれかがいっているようなきがする
 
 がんばれ
 がんばれ

ぼくたちは いきているだけで
きっと えらいのだとおもう
かなしみを こらえて いきているのだから
おいおいなきながら いきているのだから
それだけで じゅうぶんに

  ほっきょく

どうぶつえんでうまれたしろくまは
こおりをだいている
きもちいいのか うっとりとめをほそめ

ねむいような ねむくないような
しろくまは きいている
どこかできいたことのあるなつかしいおとを
でも それがなにかはおもいだせない

りゅうひょうを ふきわたるかぜ
なきかわす うみどりのむれ
とどのさけび
かあさんのおなかのなかできいていたもの

しろくまはだれにともなくつぶやく
「ぼくがすんでいたのは・・・・」
「あったかいところだったなあ」

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