『うたうかたつむり』詩:野田沙織  絵:浜田洋子

詩集

『うたうかたつむり』詩:野田沙織  絵:浜田洋子

第25回三越左千夫少年詩賞受賞

2020 年12 月25 日 発行 四季の森社 定価:本体1200円+税

ISBN978-4-905036-25-8 C0092

著者略歴 野田沙織(のださおり)

一九七九年三月二日、東京生まれ。福岡で育つ。九州大学文学部卒業。在学中に「詩の少年・詩の少女」入賞。卒業後は図書館司書として働く。同人誌「マグノリアの木」「みみずく」に参加。児童文学誌「ネバーランド」「ざわざわ」「少年詩の学校」などにも詩やエッセイを発表。二〇二〇年七月七日、病気にて急逝。享年四十一歳。

本集から

 かたつむり

かしゃ

足の下で こなごなになった

それは きのうここにいた

かたつむり

だったかもしれない

そんなにも

たよりない殻で

きっぱりと

身をまもっていたのに

ごめんなさい

かしゃ

とりかえしのつかない

しずかな

音だった

 らったった

アライグマも

ワライグマも

ワルイクマも

あつまった

わになった

らったった

 やくそく

ならない口笛

ふかふか吹いて

少しだけ 空を向いて

自転車に乗ってたら

  たぶん

  わたし

もしかして

出会う前かもしれなくて

じゃなきゃ もう一度

生まれた後かもしれないけど

口笛といっしょに

うたってくれたら

  振り向くよ

  にっかり

 たまご

うっかり

だきとめてしまった

あんまり しずかに

あんまり しぜんに

あなたは

あずけていったから

まだ かえらないたまごだ と

おもったものは

だんだん あたたかく

だんだん やわらかく

ふくらんで

あなたが

むかえにこないまま

うでのなかで たまごが

かえったら

なにをたべる いきものの

わたしは

おかあさんになるんですか

ゆめか

くもか

わたがしくらいなら

つかまえてあげるつもりです

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