松山真子詩集『迷子』三越左千夫少年詩賞受賞
四月下旬、日本児童文学協会事務局より、本年度第28回三越左千夫少年詩賞が小社出版の松山真子さんの詩集『迷子』に決定したとの連絡があった。
松山さんの『迷子』は、小学校4,5年生くらいから大人まで幅広い年代の人々に楽しんでもらえる詩集だ。
第一章の作品「虹」「どうぶつえん」「つめきり」「ときどき」「知らない町で」は子ども時代の自らの体験や記憶をもとに、子どもにもよく伝わるくっきりとしたイメージが浮かぶ作品に仕上げられている。作品「ミスター・シャルドネ」は、まだ誰も知らなかったワインぶどうを育てた男の人生を物語詩風に描いた名作と世評高い一篇だ。村人たちから、最初のころは少し変わった男とみられたが、やがて彼のぶどうはワインコンクールで金賞を取り村人たちのあこがれのひととなる。この作品は発表当初から味わいの深い物語詩としていろいろな方々から話題になっていた。
第二章は、少し趣が変わってちょっとした思いや思いつきを短いことばで表現した作品が並んでいる。作品「しもばしら」「猛暑」「ほたる」「カラス」「鳥男」「お笑いライブ」など、誰しもがふと感じる思いが短く的確な言葉で表現されている。
ことば遊び的な作品も、松山真子さんの独自な感性を発揮している。作品「どこ吹く風」「心待ち風」は四季折々に吹く風を薫風、野分、すきま風、萩風、雁渡しなどさまざまに風を表現する言葉をならべただけで、読み手のイマジネーションを刺激してさまざまな物語を喚起させる詩篇となっている。作品「日本一周」「へんしん」「世界へ」も新しいことば遊び詩の試みとして提示されている、
第三章は、松山真子さんの少女時代の想い出がユーモラスに活写されている。長野の里山に育った少女時代、家族や友達と過ごした日々を描いた作品「どんど焼き」「山菜を摘みに」「山へ」「ランプの下で」「おじぞうさま」「かくれんぼ」「冬の夜」など、子どもの頃の出来事が新鮮な光景として描かれている。
こがしわかおりさんの詩作品に即してのさし絵もいきいきとファンタジックな詩の世界へと誘い込む。当初の予定よりも長い時間をかけ、丁寧な仕事をしていただいたと思う。
松山真子詩集『迷子』はとても味わいのある一冊に仕上がったと思ってはいたが、栄誉ある三越左千夫少年詩賞に輝くとは嬉しい限りである。
これからも松山さんが素敵な詩を書かれることを願っている。
コメント